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英国の就職難と若者の就職意識

英国紙ガーディアン(Sat 12 Sep 2026)に、大学卒業後の「後悔」を取り上げた興味深い記事が掲載されていました。

2024年夏に大学を卒業した人を15か月後に調査したところ、8割を超える人が、もう一度選ぶとしても大学へ進学すると答えています。しかし、同じ専攻を選ぶと答えた人は70%でした。

大学へ行ったこと自体を後悔している人は、それほど多くありません。むしろ、「この学部を選んでよかったのか」「学んだことが仕事につながっているのか」という迷いの方が大きいようです。

就職はしていても、希望する仕事には就けない

英国高等教育統計局(HESA)の調査では、2023/24年度の卒業生の87%が、卒業15か月後に何らかの仕事に就くか、引き続き学んでいました。フルタイムで働いていた人は57%、失業中だった人は7%です。

この数字だけを見ると、大学卒業後の就職状況は、それほど悪くないようにも見えます。しかし、何らかの仕事に就くことと、自分が希望する専門職や、その後のキャリアにつながる仕事に就くことは別です。

英国の主要企業など155社を対象とした2025年の調査では、大学卒業者の採用数は前年より8%減少しました。一方、1つの採用枠に対する応募は平均140件。20年ほど前は38件だったため、競争はかなり激しくなっています。

最近では、卒業後間もない人の20%が、100件を超える求人に応募しています。

「就職に強い学部」も安心できない

ガーディアンの記事では、これまで就職に強いと考えられてきた学部でも、卒業後の満足度が下がっていることが紹介されています。

例えば、コンピューターサイエンス専攻者のうち、大卒レベルの仕事に就いた割合は、4年前の66%から直近では56%に低下しました。生成AIの普及により、若手が担当してきた初級レベルの仕事が減っている可能性も指摘されています。

ただ、現在の就職難を、すべてAIの影響と考えるのは早いでしょう。景気の先行きが不透明なため、企業が採用を絞っている面もあります。また、AIで応募書類も作れるようになったことで、応募件数そのものが増えています。

若者にとってAIは、仕事を奪うかもしれない不安な存在である一方、就職活動でも仕事でも、使えなければ困る存在になっています。実際、英国の学生や卒業生の35%が、AIによって自分のキャリアの機会が減ったと感じています。

若者が見ているのは「入社後に成長できるか」

同じ調査で、若者が仕事を探す際に重視していたのは、「教育・能力開発の機会」「求められるスキル」「給与」でした。

一つの会社に入れば将来がある程度保障される時代ではありません。若者は、会社名や初任給だけでなく、そこで何を経験できるのか、どんなスキルが身につくのか、その経験が次の仕事でも通用するのかを見ています。

日本では新卒一括採用が今も根強く、人手不足も続いています。2026年3月卒の大学生の就職率は98.0%、2027年卒の大卒求人倍率も1.62倍です。少なくとも現時点では、英国のように卒業後100社以上へ応募する状況が、一般的だとはいえません。

ただし、人気企業や人気職種への応募の集中は、日本でも起きています。今後、AIによって新人が担当してきた仕事が減り、採用でも「どの大学や学部を出たか」より「何ができるか」が重視されるようになれば、英国で見られるような、学部で学んだことと就職先とのミスマッチは、日本でも、これまで以上に広がる可能性があります。

企業側も、「最近の若者はすぐ辞める」と嘆く前に、入社後に任せる仕事や育成の仕組み、数年後のキャリアを、もっと具体的に伝える必要があります。

また、学部名や専攻だけで応募者を判断するのではなく、大学で身につけた考え方や学ぶ力を、自社の仕事でどう生かせるかを見ることも大切です。

英国の状況を、そのまま日本に当てはめることはできません。それでも、大学を卒業しただけでは将来が見通しにくくなり、若者が会社の知名度よりも、そこで得られる経験や成長を重視するようになっている点は、日本企業にとっても無関係ではないと思います。

この記事を書いた人

ヒサエダコンサルティング
久枝良彰
監査法人トーマツのマネジメントコンサルティング部、およびグループ会社のトーマツコンサルティング株式会社で、組織・人事コンサルティングのプロジェクトマネージャーとして在籍。平成17年9月に、有限会社ヒサエダコンサルティングを立ち上げ、代表取締役に就任。これまで、多数の企業・公的機関・医療機関に対して、組織・人事制度のコンサルティング支援を経験している。また、学校法人産業能率大学の契約講師として、全国の企業・地方自治体の管理職研修・人事評価者研修を多数実施している。平成21年度より、中小企業基盤整備機構・中小企業大学校の契約講師も務める。九州大学大学院(MBA)修了、「組織論」を中心に研究。
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