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2026年英国地方都市レポート③ 英国の20代キャリア。流動性の中でどう成長するのか
1. 初期キャリアは「揃わない」のが前提
前回見た通り、英国では新卒時点でキャリアのスタートは大きく分かれます。Graduate Schemeに進む層と、そうでない層です。
その結果、
- ●すぐに専門職として働き始める人
- ●契約職やアルバイトを経て模索する人
- ●一度別の分野に進んでから戻る人
といったように、日本以上に、スタート地点もスピードもバラバラなのが前提になります。
2. 二層構造のその後――キャリアはどう分かれるか
この違いは、その後の数年間にも影響します。
まず、Graduate Schemeに進んだ層は、比較的スムーズにキャリアが立ち上がります。プログラム終了後は専門領域に配属され、20代後半には一定の専門性やポジションを持つケースが多く見られます。
一方で、それ以外の層はもう少し段階的です。
- ●卒業後にパートタイムや契約職
- ●数年かけてフルタイム職へ移行
- ●転職を通じて職種や条件を改善
というプロセスを経ることが一般的です。
ただし重要なのは、この差が固定されるわけではないという点です。英国では、途中から専門職に移る、より良い企業に転職する、といった動きは珍しくありません。
3. 転職と移動で積み上げる20代
英国のキャリアの特徴は、やはり流動性の高さです。
実際、英国では勤続年数の中央値は約5年前後とされており、日本の約12年前後と比べて半分以下の水準です。これは、転職を通じてキャリアを積み上げていくことが前提となっていることを示しています。
20代では、
- ●より条件の良い企業へ移る
- ●より専門性の高い職種へ移る
- ●地域を変えて機会を広げる
といった動きが一般的です。
特に地理的な移動は重要で、
- ●ロンドンでキャリアをスタート
- ●数年後に地方へ戻る
- ●あるいは海外へ移る
といった選択も多く見られます。
ここは日本との大きな違いです。日本では近年、地元志向や転勤回避の傾向が強まっていますが、英国では依然として、「動くことで機会を取りに行く」考え方が主流です。
4. AIと構造変化、日本との共通点
一方で、両国に共通する変化も見られます。
近年はAIの影響もあり、特にホワイトカラーの初期ポジションでは採用が抑制される傾向があります。実際、英国では求人件数もピーク時から減少しており、20代前半のキャリアの入り口はやや厳しくなっています。
また、住宅コストの上昇も無視できません。英国では民間賃貸の平均家賃が月額約1,300ポンド(約24万7,000円)に達しており、若年層にとって大きな負担となっています。
この影響で、ロンドンから地方へ戻る、あるいは地元にとどまる若者も増えています。
動けば機会はある。しかし、コストがそれを制約するという構造は、日英で徐々に似てきているとも言えます。
おわりに
英国の20代のキャリアは、不安定さと引き換えに高い柔軟性を持っています。そこでは、どの会社に入るかよりも、どのような経験を積むかが重視されます。
新卒時点での違いは確かに存在しますが、それが固定されるわけではなく、転職や移動を通じて再構築されていくのが特徴です。
一方で、日本では地元志向や安定志向が強まる中で、キャリアの動き方はやや対照的にも見えます。ただし、住宅コストや雇用環境の変化といった制約が強まる中で、両国の若者の選択は少しずつ近づいてきているようにも感じられます。
前回の「入口」の話とあわせて見ると、英国のキャリアは「選抜と流動」の組み合わせで成り立っていることが分かります。これは、日本のこれからを考える上でも、一つの示唆になるのではないでしょうか。
