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エンゲージメント調査の実態と社員のエンゲージメント向上を目指した人事施策

近年、多くの企業が社員のエンゲージメント向上に注力しており、その指標を把握するためにエンゲージメント調査を実施しています。私のクライアント企業でも、毎年同じ時期に25~30問程度の無記名調査を実施し、社員の意識や組織の課題を可視化しています。調査項目は勤務地、部門、年代、管理職・非管理職などの属性ごとに分析し、組織ごとの特徴や課題を明確にします。

調査から見える課題とその対応

調査結果から、しばしば意外な課題が浮かび上がることがあります。例えば、ある運輸業のクライアントでは、長らく人員不足の部署に対する施策を優先していましたが、調査の結果、別の部門のエンゲージメントスコアが低いことが判明しました。その後、その部門で退職者が増加し、組織全体に影響を及ぼす事態となりました。このように、データをもとに客観的に課題を把握し、先手を打つことが重要です。

低スコアの主な要因と施策

エンゲージメント調査では、特に以下のような項目でスコアが低くなるケースが多く、人事制度やその運用が要因となっていることが多いです。

  • 上司の評価基準の不透明さ:どのような基準で評価されるのかが明示されていない
  • 昇進・昇格の公平性:昇進・昇格が適正に行われていると感じられない
  • 上司のフィードバック不足:仕事ぶりに対する前向きな声掛けや賞賛が少ない
  • 挑戦の機会の不足:新しい業務に挑戦できる環境が整っていない

このような課題に対しては、評価基準の明確化、フィードバックの強化、公平なキャリアパスの提供などが求められます。調査結果をもとに、スコアが、例えば6.0満点中3.5以下の項目については経営層や幹部と徹底的に話し合い、具体的な改善策を講じます。

社員の声を活かした施策

エンゲージメント向上には、社員の意見(自由記入欄)を積極的に取り入れることも重要です。例えば、あるクライアント企業では、「社長との個別面談が良かった」というフィードバックがあり、定期的な1on1の機会を増やす施策を検討しました。また、禁煙手当や動物死体処理手当、奨学金返済補助など、社員のニーズに応じた手当の導入も議論されています。ただし、単にアイデアを取り入れるのではなく、その背景や状況を踏まえた上で慎重に検討することが重要です。

まとめ

エンゲージメント調査は、社員の本音を把握し、組織の課題を明確にするための重要なツールです。しかし、調査を実施するだけでなく、結果を分析し、具体的な施策につなげることが肝心です。データを活用し、経営層や現場の意見を取り入れながら、社員が働きやすい環境を整備することで、組織のエンゲージメント向上を実現していきましょう。

この記事を書いた人

ヒサエダコンサルティング
久枝良彰
監査法人トーマツのマネジメントコンサルティング部、およびグループ会社のトーマツコンサルティング株式会社で、組織・人事コンサルティングのプロジェクトマネージャーとして在籍。平成17年9月に、有限会社ヒサエダコンサルティングを立ち上げ、代表取締役に就任。これまで、多数の企業・公的機関・医療機関に対して、組織・人事制度のコンサルティング支援を経験している。また、学校法人産業能率大学の契約講師として、全国の企業・地方自治体の管理職研修・人事評価者研修を多数実施している。平成21年度より、中小企業基盤整備機構・中小企業大学校の契約講師も務める。九州大学大学院(MBA)修了、「組織論」を中心に研究。
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