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英国地方都市から見る賃金と物価の伸び
はじめに
今秋、英国の地方都市(カーディフ、シェフィールド、ケンブリッジ、ノーザンプトンなど)を訪れる機会がありました。現地のホテルやレストラン、ショップ、公共施設を利用し、「賃金と物価」という観点で多くの示唆を与えてくれました。
最も強く感じたのは、日本の感覚からすると非常に高い価格水準と、一方で、その環境で働くスタッフの熱心さ・親切さの二つです。
英国の物価水準と生活コスト
まず目につくのは、生活コストの高さです。レストランでのランチセットは £15〜20(約3,000〜4,000円)、スタンダードなビジネスホテルが £120〜180(約24,000〜36,000円)。日本と比べると、感覚的にはおおよそ 2〜3倍 の水準です。
さらに、交通費や公共料金も総じて高く、英国で暮らすということがいかにコストのかかる環境なのかを実感しました。
英国の賃金上昇とその背景
この高い生活コストを下支えしているのが、賃金の伸びです。
統計によれば、英国では過去10年間に 民間部門の賃金は約46%増、公的部門では約34%増。同じ期間の物価上昇が約32%とされるため、賃金の伸びが生活コストを上回っていることになります。ちなみに英国における最低賃金は、2025年4月時点で、21歳以上向けに設定されている National Living Wage は £12.21/時(約2,442円換算)です。
英国のBBC放送を見ていても、インフレに対する対策や賃金上昇についてのニュースは度々上がっており、今なお多くの課題を抱えています。しかしながら、全体として、働けば生活が改善するという感覚が、現場で働く人々の動機づけにつながっているのではないかと感じます。実際、地方都市のホテルやレストラン、公共サービスのスタッフも総じて親切で熱心に働いており、接客の丁寧さが印象に残りました。
日本の賃金と物価の現状
一方で、日本はどうでしょうか。
日本の賃金は、同じ10年間で大きく伸びていません。直近でも平均賃金の前年比伸び率は +3%前後 にとどまり、インフレ率とほぼ拮抗、むしろ実質賃金はマイナスとなる月も少なくありません。
2025年度の日本の最低賃金は、全国の加重平均時給1,121円に引き上げられましたが、依然として「生活コストの上昇に賃金が追いつかない」感覚が強く残ります。地方都市では生活費が首都圏より低いとはいえ、賃金水準も抑えられており、日々の労力が報われにくい構造が続いています。
おわりに
英国のように、賃金と物価がある程度バランスし、働くほど生活も改善するという感覚を社会全体で共有できれば、人々の働く誇りや接客の質がさらに高まるでしょう。
日本もいま、インフレと賃上げの局面に入りました。このタイミングで、諸外国の経験を参考に労働生産性と賃金、物価と生活の質の関係を見直し、働く人々が「努力が報われる」実感を持てる仕組みを整えていくことが求められています。
